幕の上がるほんの数日前、朝日新聞夕刊の舞台版で大きく取り上げられていたので、一気に気になりましたが、
人気の脚本家、木皿泉さんの初戯曲に、薬師丸ひろ子、篠井英介、萩原聖人、村井良大とキャストが超豪華な顔ぶれと言うこともあり、劇場チケットは既に完売御礼。
チケットぴあに残席わずかを見つけ、奇跡的に指定席を手に入れました。しかも良席。
吸血鬼の男女が、人間の子どもを育てていく日常のお話。
ちょっとネタバレをしながら。
パンフレットによると、吸血鬼たちは、自分が人間として暮らしていた時を反映した性質で、現在を生きている。
吸血鬼アザミ 人間の少年マリオに姉さんとして接している(気分は海洋学を研究する女子大生)。
吸血鬼夏彦 人間の少年マリオに父さんとして接している(気分は理想の父親)。
吸血鬼こがね 人間の少年マリオにおばあちゃんとして接している(でも気分はアラフォー女子)。
人間マリオ 高校生で絶賛反抗期中。
夏彦が2歳のマリオを、何らかの喧噪の中連れてきて、3人で育てている。
が、マリオは人間なので成長するが、吸血鬼は歳をとらない。
「なんでここんちん中のもの、全部茶色いんだよ!」家の中のものがすべからく古いことが、吸血鬼には気にならなかったのだ。おばあちゃんなんか900年生きているんだもの。
木皿さんの書くホンは、言葉の紡ぎ方が絶妙で、時にはっと現実現代的なエピソードがはいったり
日常のさりげないひとコマが、えも言われない極上の台詞になって、心の深ーいところにすっぽり落ち着く。
ドラマ「すいか」(舞台は三軒茶屋だったなあ)とか、あっちゃんの「Q10」とか。
「慣性の法則」に丸めこまれて永遠の命を生きて死なない吸血鬼と、生きて成長して老いて死んでいく人間。
両者の間に突然相容れないものが流れる。違う「匂い」だ。
吸血鬼たちはマリオを愛していて、この上なく愛していて、突如変わって終ってしまった「今までのマリオとの日常」に決着を付ける決心をする。
ホンもチャーミングなのだが、役者がものすごくチャーミングだった。
薬師丸さんは、少女のように可愛らしく、通る声も魅力的。
篠井さんは本領発揮の最高の女形。まったくぶれずに超魅力的な女形。
萩原さんはいい役者になったね。少年の面影も残しているけど。舞台は初見。達者でした。
村井くんは、テニスの王子様とか系(このくくり失礼かな)可愛いイケメンで、でも他のベテランに負けずに若手実力派の片鱗を見せる。
ラストのラストで、このところ干からびて壊れてんじゃねえか(映画おおかみこどもでも、上手いなあと感心こそすれ泣きませんでした)と思う、乾いた私の涙腺が崩壊しました。目の前がにじむのでハンカチでおさえおさえ。心の隅っこのツボを優しく突っつかれた感じで。壊れた涙腺はなかなか戻らず、帰りの世田谷線の中でもうつむくしか出来ず。偶然に友人が同じ回を観ていたらしく、電話とメールくれて、また涙。ああ。
相方にごめんなさい(時間的に)なんですが、もっかい立ち見でチケット取りました。
これはもう一回観たくなった。この感覚久しぶり。小劇場でステージ数も少ないし。精いっぱいの我儘。
さあ、これから、勢いでツタヤで借りてきた「Q10」観よう、かな?